ビルの玄関を入っていく時に、よく「定礎」というプレートを目にします。
この「定礎」とは、どういうもので、どういった意味があるのでしょう。
定礎(ていそ)
「定礎」は、建築時の定礎式という儀式のときに埋め込まれる「プレート」や「石碑」で、「定礎」という文字や、建物の「竣工年」などが刻まれています。
もともと「定礎」は、石造りやレンガ造りが中心のヨーロッパで、建物の基準となる隅の礎石(そせき)を定めることをいいました。
「定礎」は、西洋式の建築物が日本に伝わってきてからのもので、明治時代ころから始まったといわれています。
「定礎」は、建物の「南東隅」もしくは「正面玄関周辺」に置くのが、一般的とされています。
礎を定めるものなので、本来は、着工当初に設置するものですが、ビル建築においては、掘削工事などが行われることや、定礎石自体が、仕上げの一部となっているので、「工事終了時に設置される」のが通例となっています。
定礎箱
「定礎」の下の地中には、「定礎箱」という箱が埋まっています。
「定礎箱」は、腐食に耐えられるように鉛、銅、ステンレスなどで作られます。
「定礎箱」の中には、住所、発注者、施工者などを記した「定礎銘板」をはじめ、「建物の平面図」「当時の新聞や硬貨」「社員名簿」などが納められるとされますが、これは、あくまでも習わしとされているもので、実際に中に入れるものは、建築主と相談しながら決めていくというのが、一般的なようです。
普段は、取り出すことはできないので、「定礎箱」を次に見ることができるのは、「建物を壊す時」ということになります。
一度入れてしまえば、その建物の寿命が尽きるまでは開けられることのない、「タイムカプセル」のような箱が「定礎箱」です。
建設当時の思い出が詰まっていると考えると、感慨深いものがあります。