子宮筋腫は、30代以上の女性の5人に1人が持っているといわれている、子宮にできる良性の腫瘍です。
子宮筋腫は、ある意味ポピュラーな病気と言えるかもしれませんが、月経の経血量が多い、月経痛が強いなどの症状以外には大きな自覚症状がないのが特徴といえます。
妊娠して初めて子宮筋腫に気づくという人も多いです。
子宮筋腫は、30代後半から50代前半にかけて発症することが多くなっています。
この年齢に発症することが多いというよりは、筋腫がある程度の大きさになって、月経過多や月経痛などの自覚症状がでるようになり、この年齢頃になると発見されることが多いという方が正確かもしれません。
どうして子宮筋腫ができるのか、はっきりとしたことは分かっていませんが、卵巣から分泌されるホルモンのエストロゲンが深く関わっていると考えられています。
胎児の頃に、子宮に筋腫の芽のようなものができていて、思春期になってエストロゲンが分泌されるようになると、その影響で芽が徐々に大きくなっていき、筋腫として見つかるのではないかと考えられています。
子宮筋腫のできる場所によって症状が異なる
子宮筋腫は、様々な場所にできますが、どの場所に筋腫ができるかによって、現れる症状も変わってきます。
子宮筋腫ができる場所によって、大きく3つのタイプの分けることができます。
・漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)
・筋層内筋腫(きんそうないきんしゅ)
・粘膜下筋腫(ねんまくかきんしゅ)
漿膜下筋腫
漿膜下筋腫は、筋腫がかなり大きくなるまで症状が現れにくく、筋腫が子宮の外に向かって成長していくタイプの筋腫です。
普通は60~70gほどの重さの子宮が、1~2kgもの筋腫を抱えるようになることもあります。
漿膜下筋腫は、外からしこりとして触れるくらいの大きさになっても、つらい症状がほとんどないことが多いので、見過ごされてしまうことも多くなります。
筋層内筋腫
筋層内筋腫は、最も多いタイプの筋腫で、複数個できるのが一般的ですが、小さいうちはほとんど症状がなく、大きくなってくると症状が出始めます。
筋肉の中で筋腫が成長していく筋層内筋腫は、筋腫が大きくなるにつれて、子宮内膜が引き伸ばされていきます。
このため、月経痛や月経時の出血が多くなって下腹部を触るとしこりが分かるようになりますが、筋腫がゆっくりと大きくなっていった場合には、自覚しにくいこともあります。
「下腹部のシコリは最近太ったから」「月経血が多いのは体質のため」などと、勝手な判断をしていることも少なくないようです。
粘膜下筋腫
粘膜下筋腫は、小さい腫瘍でも激しい症状が現れることがしばしばあります。
粘膜下筋腫は、子宮の内側に向かって発育していきます。
粘膜下筋腫は出血しやすいのが特徴で、筋腫が小さいうちから出血がダラダラ続いたり、月経時に出血量が多くなったりという症状が現れやすくなります。
筋腫が内側にできるので、外からは触れにくいというのも特徴です。
子宮筋腫があると妊娠しにくいといわれますが、粘膜下筋腫は胎児が宿る子宮の内腔に筋腫が突き出てくるので、特に妊娠しにくいといえます。
粘膜下筋腫が大きくなって、茎ができてぶら下がるように子宮の中で発育すると、まれに腟内に筋腫が出てくる「筋腫分娩」という状態になることもあります。
不正出血が続いたり、筋腫を伝わって腟から子宮に細菌感染が起こって危険な状態になることもあります。
子宮筋腫の症状と治療
子宮筋腫の症状は、月経痛、頻発月経、過多月経、不正出血、貧血などのほか、筋腫が大きくなって膀胱、腸、神経を圧迫して起こる頻尿、便秘、腰痛などの症状が現れることもあります。
筋腫は良性の腫瘍なので、増殖し続けたり転移したりすることはないですし、命にかかわるようなこともほとんどありません。
また、エストロゲンの分泌は年齢とともに低下していき、それに伴って筋腫も小さくなっていくので、必ずしも治療をしなくてはならないというわけでもありません。
子宮筋腫の治療には、薬物治療と手術がありますが、症状、年齢、筋腫の位置・大きさ、妊娠の希望の有無などを考慮して、治療方針を検討するといいでしょう。
妊娠と子宮筋腫
子宮筋腫合併妊娠の頻度は、0.5~2.0%程度といわれていますが、妊婦の高齢化で増加する傾向にあります。
子宮筋腫は、初診の際に見つかることが多いですが、妊娠の週数が進んで胎児が大きくなると、見つかりにくいこともあります。
子宮筋腫の位置と大きさが分かったら、妊娠や出産に与えるおおよその影響を推測しますが、妊娠中にはホルモンの影響や血流量の増加のために、胎児の成長とともに子宮筋腫も大きく育ってしまうことが多いので、予測が難しいこともあります。
子宮筋腫の妊娠への影響
子宮筋腫が妊娠中に及ぼす悪影響としては、流産、早産、胎児発育不全、膀胱や腸を圧迫することによる頻尿や便秘、腹痛などが挙げられます。
流産や早産の兆候が見られるときには、鎮痛剤とともに子宮収縮抑制剤が使われますが、それでも痛みが治まらない場合や、有茎漿膜下筋腫がねじれて激痛を起こす場合には、手術を行うこともあります。
しかし、妊娠中に手術が行われることはほとんどありません。
妊娠中は子宮内の血流が良くなっていて、手術中に出血量が多くなる危険性があり、また、手術による刺激が流産や早産を促すことにもなりかねないからです。
手術はできるだけ避けて、安静や薬物療法で乗り切ることがほとんどです。
筋腫がお産の妨げになることがありますが、産道の近くに筋腫がある場合でも、妊娠の経過とともに筋腫の位置が変動して、結果的にお産の妨げにはならないということもよくあります。
お産の前に超音波で筋腫の位置を確認し、帝王切開の準備をしながら経腟分娩に踏み切ることもあります。
子宮筋腫の場合、出産後は、子宮の収縮が悪く、出血量が増えたり悪露が長引いたりすることがありますが、筋腫自体は次第に小さくなっていくことが多いです。