流産とは、妊娠22週未満に子宮内で胎児が亡くなったり、育たなくなってしまうことをいいますが、高齢で妊娠した場合には、流産する確率が高くなる傾向にあります。
流産は、どんな年齢でも起こることですが、40歳を超えると、流産の確率は急激に高くなります。
年齢別の流産率は、30代前半で15%前後、30代後半で20~25%前後といわれていますが、40代前半になると35~40%と高くなり、40代後半になると50%前後と非常に高い確率になるといわれています。
高齢で流産しやすくなる2つの原因
卵子の老化→染色体異常
女性は、自分が胎児の頃に、卵子の元が作られ、それ以降は作られることがないので、年齢を重ねるにつれて、体が老化するように、排卵の順番を待っている卵子の元も、老化していきます。
精子は、新しく作られていきますが、卵子の元は、自分が胎児のときに、一生分すべてが作られているので、高齢になれば、体と同じように、卵子も老化していきます。
卵子が老化することで、染色体異常が増えるとされていますが、それによって、不妊や流産となることが増えるだけでなく、胎児も、ダウン症をはじめとした、染色体異常になる確率が高くなるとされています。
その確率は、年齢が高くなるにしたがって急激に高くなっていき、35歳で約200分の1程度だったものが、40歳で約80分の1、42歳で約25分の1というように、加速度的に高くなっていきます。
高齢になると流産しやすくなるのは、胎児の染色体異常の確率が高くなることが、大きな要因になっているというわけです。
この、卵子の老化による胎児の染色体異常が、高齢での流産率を高くしている、大きな原因の一つと考えられています。
妊娠初期での流産は、受精卵が子宮内膜に着床したにもかかわらず、胎児に染色体異常があることによって、流産となることがほとんどです。
染色体異常のある受精卵が着床する確率は、全妊娠の約25%といわれますが、このうち、約10%分が化学流産となり、残りの約15%分が初期流産となるといわれます。
ちなみに、妊娠の週数で見ると、妊娠9週目頃に流産する確率が高くなっています。
子宮の筋力の低下
妊娠すると、赤ちゃんは、子宮内でどんどん成長していき、赤ちゃんの成長と共に、子宮もどんどん大きくなっていきます。
子宮は、筋肉でできていますが、加齢で子宮の筋力が弱くなってしまっていると、子宮内の赤ちゃんをしっかりと守っておくことができなくなってしまいます。
その結果、流産が起きやすくなってしまうというわけです。
妊娠初期の流産
妊娠週数によって、流産の主な原因は異なりますが、流産の多くは、妊娠12週未満に起こる「初期流産」で、その原因は、受精卵の染色体異常であることがほとんどです。
染色体異常のほかにも、喫煙、糖尿病などが原因になることもあります。
化学流産
妊娠検査薬や尿検査で妊娠反応が出ても、超音波検査では、心拍や胎嚢が確認されず、予定よりも少し遅れて、月経が始まることがあります。
妊娠反応は出ても、着床が継続せず、妊娠が成立しなかった「化学的流産」です。
妊娠を希望している場合には、生理予定日より前から、妊娠検査薬でチェックしたり、不妊治療で判定日に検査をしたりしますが、妊娠すると、HCGホルモンが分泌されるので、それに反応して、妊娠の陽性反応が出ます。
しかし、着床が継続しなければ、胎嚢が確認される前に出血して、流産となってしまいます。
化学流産は、胎児や心拍が確認されないので、流産率にはカウントされません。
稽留流産
初期の流産では、出血や腹痛が続いたり、突然、多量の出血や激しい痛みに襲われることがありますが、最近では、超音波検査によって、症状が出る前に、流産が発見されることが多くなっています。
何の症状もなくお腹の中で胎児が亡くなっている状態のことを「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」と呼びます。
稽留流産は、妊娠6週~12週くらいの、妊娠初期に起こります。
妊娠後期の流産
妊娠12週以降の流産は「後期流産」と呼ばれますが、後期流産は、流産全体の10%程度といわれています。
初期流産の原因のほとんどは、胎児側にありますが、後期流産は、母体側に原因があることが多いといわれます。
主な原因として挙げられるのが、絨毛膜羊膜炎と子宮頸管無力症です。
絨毛膜羊膜炎
絨毛膜羊膜炎は、細菌が、膣から入って子宮に広がることで起こりますが、胎児を包んでいる卵膜を破って、流産や早産を起こすことがあります。
お腹の張りを感じることもあれば、自覚症状が全くない場合もあります。
絨毛膜羊膜炎の原因となる細菌は、通常なら、体の防御機能で防御するので、感染することはありませんが、何らかの原因で、防御反応が働かなくなると、絨毛膜や羊膜まで細菌の感染が広がってしまいます。
精液の中には、絨毛膜羊膜炎を引き起こす細菌が含まれているといわれていますが、他にも、直接的には関係ないと思われる歯肉炎などが原因になることもあります。
歯肉炎がある場合には、そうでない場合と比べると、早産のリスクが約7倍になるともいわれています。
子宮頸管無力症
子宮頸管無力症は、子宮頸管の感染や、子宮頸部のコラーゲン異常などが原因で起こります。
妊娠中期以降に、本来なら開かないはずの子宮口が開き始めて、妊娠が維持できなくなります。
子宮頸管が短くなり、子宮口が大きく開いて、羊水腔が出てくるなどの症状が現れます。
子宮頸管無力症は、流産や早産の原因になりますが、発症率は、全妊娠の0.05〜1%程度と、そんなに高くはありません。
前兆などがなく、子宮口が開いてしまうので、初めての妊娠の場合は気づかないことがほとんどです。
まとめ
残念ながら、確実に流産を予防する方法はありませんが、「体を冷やさない」「疲れすぎない」「睡眠を十分にとる」「栄養バランスのとれた食事をする」などは、妊娠前後には、とても大切なことです。
流産の原因は、胎児側にあることもあれば、母体側にあることもありますが、高齢になると、いずれの原因も確率が高くなってしまいます。
特に、卵子の老化による染色体異常は、高齢での流産の確率が高くなる大きな原因になっています。
加齢による老化をくい止めることはできないので、高齢になってから妊娠をしたいと思ったら、できるだけ早く妊活を始めることが重要です。
卵子の老化を防ぎながら、とにかく早く妊活を始めることが、高齢で妊娠するための、一番の方法といえるかもしれません。