高齢出産では難産になりやすい?難産の原因と予防

「高齢になるほど難産になりやすい」ということを、よく耳にします。

年齢が高くなるほど、産道が硬くなり、骨盤も開きにくくなっているため、お産に時間がかかったり、出血が多くなったりする傾向があるのは確かなので、若い頃の出産に比べて、高齢での出産が、難産となる確率がある程度高くなるということは、仕方のないことです。

しかし、妊娠中にお産に向けた「体力づくり」や「体重管理」をしっかりしていれば、高齢出産でも、安産につながりやすくなるということも、また事実です。

高齢だけが難産の原因になるわけではなく、若い年齢の出産でも、難産になることもあります。

よく言われるとおり、お産は「案ずるより生むが易し」だといえます。

高齢出産と難産

高齢出産で難産になりやすくなる原因

高齢出産で難産になりやすくなる主な原因に、

・軟産道強靱(なんさんどうきょうじん)
・微弱陣痛(びじゃくじんつう)
・頸管熟化不全(けいかんじゅくかふぜん)

などがあるといわれています。

軟産道強靭

分娩の際の赤ちゃんの通り道が「産道」ですが、産道のうち、骨盤の内側は「骨産道」、子宮下部から子宮頸部・腟・外陰部の一部までが「軟産道」と呼ばれます。

赤ちゃんが、子宮の入り口から出てきた後、外へ出ていくまでの通り道が「軟産道」です。

この軟産道に柔軟性がなく、なかなか伸びずに狭いままだと、赤ちゃんが、なかなか通れない状態になってしまいます。

高齢出産では、産道やその周辺が固くなり、伸展性が不足して産道が狭くなった「軟産道強靱」の状態になっていることが多くなります。

軟産道の筋組織は、加齢ともに萎縮していき、産道の柔軟性や伸展性が、乏しくなっていきます。

このため、高齢出産の場合には、赤ちゃんがスムーズに出てくることができずに、分娩時間が長くなってしまうというわけです。

微弱陣痛

微弱陣痛とは、弱い陣痛が、長く続く状態のことをいいます。

また、高齢出産では、加齢による子宮筋の老化で、子宮筋の伸縮性が衰え「微弱陣痛」になることも多くなります。

微弱陣痛の場合には、陣痛の間隔がなかなか縮まらず、子宮口も開かないため、赤ちゃんが出てこられない状態になってしまいます。

微弱陣痛では、胎児が長い間産道内で圧迫された状態が続くので、早く分娩するために、「帝王切開」や「吸引分娩」が必要になることも少なくありません。

頸管熟化不全

子宮の入り口から4㎝前後の範囲の筒状になった部分が「頸管」で、子宮の中から、赤ちゃんが出てくるところです。

頸管は、普段は硬い状態ですが、陣痛が始まると、子宮から赤ちゃんが出ていきやすくなるように、次第に、軟らかくなっていきます。

子宮の入り口が完全に開いて、赤ちゃんが出てくる準備が整うと、頸管は、マシュマロのように軟らかくなるといわれています。

頸管が軟らかくなっていくことは、「頸管の熟化」と呼ばれますが、高齢になると、頸管の熟化がスムーズに進まないことが多くなります。

このような「頸管熟化不全」の状態になると、赤ちゃんが、なかなか産道を通ることができなくなり、痛みが強くなり過ぎたり(過強陣痛(かきょうじんつう))、分娩時間が長くなり過ぎたり(遷延分娩(せんえんぶんべん))してしまう状態になります。

分娩にどれくらいの時間がかかったら難産?

難産のはっきりとした定義はありませんが、「陣痛が始まってから赤ちゃんが生まれてくるまでに長い時間がかかった場合」や「出産がスムーズに進まず、人の助けなしには分娩ができないような場合」は、難産だといえます。

規則的に陣痛が起きるようになってから、赤ちゃんが産まれて、胎盤が子宮内から出てくるまでにかかった時間を「分娩所要時間」と呼びますが、分娩所要時間は、初産婦で11~15時間経産婦では6~8時間程度といわれています。

それ以上の時間がかかった場合には、一般的に「難産」といわれます。

特に、初産婦で30時間、経産婦で15時間以上かかっても赤ちゃんが産まれない場合は、「遷延分娩(せんえんぶんべん)」と呼ばれますが、この場合は、完全に難産といえます。

遷延分娩となった場合は、明らかな異常事態とみなされるので、緊急に、帝王切開になることがほとんどです。

帝王切開と吸引分娩

帝王切開

高齢出産では、トラブルが生じるリスクも高くなるので、あらかじめ、帝王切開を選択することも多くなります。

また、陣痛が長引いて、緊急に帝王切開になることも珍しいことではありません。

帝王切開は、母子のどちらかに問題が生じて、自然分娩では難しいと判断されたときに行われます。

帝王切開では、お腹と子宮を切開して、赤ちゃんを直接取り出すので、子供を生んだ感覚がないのでは、と思われることもあるようですが、決してそんなことはありません。

下半身麻酔なら、赤ちゃんの産声もしっかりと聞くことができます。

日本では、6人に1人(16.7%)が、帝王切開で出産しているといわれています。

高齢になるほど、帝王切開での出産が多くなるのは確かですが、若い人の場合でも、10人に1人(10%)は、帝王切開で出産しているといわれています。

吸引分娩

高齢出産では、吸引分娩となる場合も多くあります。

吸引分娩は、シリコン製や金属製のカップを胎児の頭に吸着させて、体全体を引き出す分娩方法です。

子宮口が全開しても、胎児が降りてこなかったり、微弱陣痛などで、お産が進行しない場合のほか、赤ちゃんに何らかの危険があり、早急に出さなければならない場合などに、吸引分娩が行われます。

吸引分娩では、確率としては、それ程高くはないですが、母体、胎児の双方に、次のような影響がでることがあります。

母体への影響
・頸管裂傷
・会陰裂傷
・膣壁裂傷
・尿道膀胱裂傷

胎児への影響
・産瘤が大きくなる
・頭血腫
・頭蓋内出血

胎児の頭に圧力がかかるので、頭に大きな膨らみができたり、頭の形が変形したり、頭に血が溜まったりすることがありますが、それらは、自然に解消していくといわれています。

ごく稀に、頭蓋内で出血することがあり、障害や後遺症が出る可能性もなくはないようですが、最近の医療技術の進歩により、障害や後遺症が残る可能性は、非常に少なくなってきているといわれています。

難産になりやすい人

高齢出産の人

35歳以上の高齢出産で初産の場合には、難産になる確率が高くなるといわれています。

高齢出産の場合には、難産のほか、高血圧、前置胎盤、常位胎盤早期剥離などになる可能性も高くなるといわれています。

体が小さい人

体が小さい人は、一般的に骨盤も小さいので、骨盤に対する赤ちゃんのサイズの比率が大きくなるために、難産になリやすくなります。

赤ちゃんは、母体の大きさに関係なく、2,800~3,000g程度が平均的ですが、骨盤がより大きい方が、お産は、すんなりと進みやすくなります。

筋力が低下している人

出産では、全身の筋肉を使うので、筋力が低下していると、難産になりやすくなります。

筋力が低下していると、出産時の踏ん張りも効かなくなり、分娩時間も長くなってしまいます。

妊娠中は、体を動かしにくいので、筋力が落ちている人が多いですが、出産でいきむ時に踏ん張れるよう、しっかりと筋力をつけておきましょう。

太り過ぎている人

太り過ぎていると、余分な脂肪で産道が狭くなってしまい、赤ちゃんが通り抜けにくくなって、難産になってしまうことがあります。

太りすぎは、赤ちゃんが巨大児になったり、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群を引き起こしたりする原因にもなります。

太りすぎには、十分注意しましょう。

痩せすぎている人

過度に痩せていると、出産時の体力が不足するだけでなく、赤ちゃんにも、十分な栄養を送ることができず、赤ちゃんの体力も低下してしまうことになりかねません。

痩せすぎによる体力の不足が、難産を引き起こしてしまうこともあります。

痩せすぎにも、注意が必要です。

難産を予防する

難産を予防する確実な方法というものはありませんが、妊娠中の過ごし方が、出産に大きく影響しているのは間違いありません。

難産を防ぐためにも、生活習慣や食生活を見直して、健康的に過ごすようにしましょう。

体重の管理を徹底する

太りすぎや痩せすぎは、難産の原因の一つになります。

妊娠初期には、つわりのために食べられなかった人も、妊娠の中期・後期になると、逆に、食べ過ぎてしまうことが多くなります。

特に、高齢出産の場合には、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群にならないようにするためにも、食事の量と内容には気をつけて、適切な体重を維持することが大切です。

そのためには、バランスのとれた質の良い食事を適量食べるように心がけることが肝心です。

適度に運動する(筋力、持久力をつける)

妊娠中、健康に過ごすためには、適度な運動が必要不可欠です。

適度な運動は、体重が増えすぎるのを予防するというだけでなく、出産時に必要となる筋力と持久力をつけておくためにも重要なことです。

高齢出産に限らず、出産の際には、筋力はもちろん、それ以上に持久力も必要になります。

陣痛が始まってからは、短くても数時間、長いときには十数時間も、赤ちゃんと共に頑張らなければなりません。

出産にどれだけ時間がかかっても、何時間でも闘える持久力を身につけておきましょう。

「散歩」「ウォーキング」「ストレッチ」などは、手軽にできる、おすすめの運動です。

高齢出産の場合は、特に健康状態に問題がなければ、上記の運動に加えて、週1~2回程度の「マタニティヨガ」や「マタニティスイミング」なども効果的です。

特に、スイミングでは、浮力で子宮を浮かせて、子宮と背骨に挟まれている静脈の圧迫を緩和するという効果も期待できます。

妊娠中の適度な運動は、体重の増加を防ぐことにもつながるので、まさに一石二鳥といえますが、運動を始める際には、必ず医師に相談してからにしましょう。

難産では産後の回復も遅くなる?

出産では、かなりの体力を消耗するので、産後はクタクタだという人も多いでしょう。

難産となれば、なおさらです。

30代後半になると、若い頃に比べて体力が低下していることは間違いありません。

そのため、難産でなくても、産後の回復が遅くなるというのは、ある意味当然のことですが、難産の場合には、さらに回復までに時間がかかるようになります。

「産後の肥立ち」といって、出産直後は、妊娠中の体から急激に元に戻ろうとするので、それに伴う不快感や痛みなどもでてきますが、無理をせずに、自分のペースで乗り切るようにしましょう。

まとめ

高齢での出産は、難産を始めとした、いろいろなリスクが高くなるのは確かですが、現在では、医療技術も進歩しているので、過剰に不安を感じる必要はありません。

「難産」というリスクを軽減して、安産に近づくためには、健康な体づくりが欠かせません。

栄養バランスのとれた食事をして、適度に運動することを心がけるほか、十分に睡眠をとったり、ストレスを溜めないことなどにも気をつけましょう。

難産の原因には、先天性のものもありますが、自分の努力次第で改善できることもたくさんあります。

難産を避けて、少しでも楽に出産ができるよう、妊娠中にできることは、すべてやってから出産に臨むようにしたいですね。

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