「卵巣嚢腫」は妊娠中でも必要に応じて手術が行われる

子宮筋腫と並んで、妊娠を機に見つかることが多いものに、「卵巣嚢腫」があります。

卵巣嚢腫は、卵巣に水や粘液がたまる、良性の腫瘍です。

ルテイン嚢胞

妊娠初期の検査で、「卵巣が腫れている」と言われることがありますが、その場合には、ホルモンの刺激で卵胞内の貯留液が増えた、「ルテイン嚢胞(妊娠性機能性嚢胞)」であることが多いです。

ルテイン嚢胞の場合は、妊娠8~9週頃をピークにして、次第に小さくなっていき、妊娠4ヶ月頃までには消失します。

卵巣嚢腫

しかし、妊娠4ヶ月を過ぎても嚢胞が小さくならなかったり、逆に大きくなっていく場合がありますが、この際には、卵巣嚢腫の可能性が高くなります。

卵巣嚢腫と診断されたら、それが、良性なのか悪性なのかを見極める必要があります。

通常は、「腫瘍マーカー」と呼ばれる血液検査が行われますが、妊娠中は、ホルモンの影響で、良性でも悪性のように高い値が出ることがあるので、正式な判別は、産後に行うことになります。

超音波の画像診断などを行い、悪性腫瘍であることが完全に否定されれば、経過を観察していきますが、悪性が否定しきれない場合には、MRIや腹腔鏡検査をして、手術も念頭に置くことになります。

卵巣嚢腫の手術は妊娠4~5ヵ月頃に

卵巣嚢腫が、ルテイン嚢胞でも悪性腫瘍でもない場合には、大きさが5cmを超えないようなら、経過を観察していきますが、8cm以上になると、茎捻転を起こしたり、お産の妨げになったりすることもあるので、手術が必要になります。

茎捻転になると、激しい腹痛が起こるので、そのショックで、流産や早産を引き起こすこともあります。

悪性腫瘍の疑いがあり、超音波検査で、卵巣嚢腫の膜が厚くて不正である場合には、大きさに関係なく手術が必要です。

また、卵巣嚢腫が、子宮の後ろ側のダグラス窩にできている場合にも、お産の際に赤ちゃんが下がっていかずに、お産が長引くことがあるので、手術がすすめられます。

手術は、胎盤が完成する、妊娠4~5ヵ月頃に行われますが、手術をしたことで早産や流産になったり、胎児や妊娠経過に影響を与えたりすることはほとんどないといわれています。

手術では、嚢腫の部分だけを取り除いて、健康な部分は残すのが一般的ですが、茎捻転を起こした場合には、組織が壊死していることが多いので、片方の卵巣を全摘出することもあります。

片方の卵巣を全摘出しても、もう片方の卵巣1つがあれば、次の妊娠も十分に可能です。

手術後

手術後は、定期的に健診を受けて、異常がなければ、経腟分娩が可能です。

出産後には、各種の検査も受けられるようになり、腫瘍マーカーの値も通常の値に戻るので、CT、MRI、血液検査などで、悪性腫瘍ではないかどうかをきちんと確認しておくことが大切です。

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