「大晦日の夜」に「108回」突かれる「除夜の鐘」。
1年の終わりに除夜の鐘を聞いていると、しみじみとした感情が湧いてきますが、「除夜の鐘」を「108回突く」のには、どんな意味があるのでしょう。
ちなみに、「除夜」とは「大晦日の夜」という意味です。
煩悩を祓うための「除夜の鐘」
「除夜の鐘」は、中国の宋の時代に始まり、鎌倉時代に、禅宗とともに日本に伝えられたといわれています。
仏教では、人間には「108の煩悩」があるとされますが、その煩悩を祓うために「除夜の鐘」を突くとされています。
煩悩が「108」あるので、それら全ての煩悩を祓うため、鐘も「108回」突くというわけです。
「煩悩」とは、人の心を惑わせたり、悩ませ苦しめたりする心のはたらきのことで、「欲望」「怒り」「執着」「猜疑」などのこととされています。
梵鐘
お寺にある鐘は、「梵鐘(ぼんしょう)」と呼ばれます。
「梵鐘」は、「朝夕の時報」として突かれたり、「法要の開始」の際に突かれたりしますが、「鐘の音」そのものに「苦しみ」や「悩み」を祓う力があると考えられています。
「除夜の鐘」が突かれるのも、この力で煩悩を祓うためですが、つかれる梵鐘の上部には、煩悩の数と同じ「108個の突起」があるといわれます。
108の煩悩
仏教では、人は「眼、耳、鼻、舌、身、意(心)」の「六つの感覚」をもっていて、これらはそれぞれ「良、悪、平(良でも悪でもない)」の「三つ受け取られ方」をするとされています。
さらに、その受け取られ方にも「浄(きれい)、染(きたない)」の二つがあり、これが「過去、現在、未来」の「三つの時代」にわたって、人の心を悩ませるというのです。
これらのことから、「6 × 3 × 2 × 3 = 108」となるといわれます。
「除夜の鐘」と同じく、「数珠の玉の数」も、正式には「108個」だといいます。
「数珠の玉」を繰りながら念仏を唱えると、煩悩が消えて行って、1周めぐれば、108の全ての煩悩が、清められるとされています。
ただ、「108」というのは「とても多い」ということを表していて、数が決まっているわけではないという説もあるようです。
「除夜」=「大晦日」に突く
本来は、仏教の修行を積むことで、煩悩を取り除くことができるのですが、「除夜の鐘」には、厳しい修行を積んでいない人の煩悩も、祓う力があるとされてきました。
これが、「除夜の鐘の儀式」となって伝えられ、普段の日ではない「除夜(大晦日)」に、鐘が突かれているというわけです。
「除夜」とは、「除日(じょじつ)の夜」のことをいいますが、「除」には、「古いものから新しいものに移る」という意味があるとされています。
つまり、古い年から新しい年に移る「除日」は、一年の一番最後の日の「大晦日」というわけです。
除夜の鐘を突く「時間帯」
「除夜の鐘」といえば、「大晦日の深夜24時頃」(元日の0時頃)というイメージがありますが、鐘を突く時間の「タイミング」にも、決まりがあるといわれます。
「107回目まで」は「前年の大晦日」に突いて、最後の「108回目」は「新年の0時」になってから突くというのが、正式な突き方だといいます。
「108の煩悩を全て祓ってしまうタイミングで新年を迎える」という意味合いがあるとされています。